顎のトラブル

あごを骨折した

事故などにより発生することが多く見られます。骨折部位により症状もさまざまです。あごが骨折部位を中心にずれることがあり、かみ合わせを重視した機能回復が重要となります。口腔外科での受診が大切だと思われます。

骨折の種類は?

原因がボールがぶつかる等の、外から受けた力(外力)による骨折を外傷性骨折、炎症や腫瘍などで骨の組織が壊れて起きるものを病的骨折といいます。
力が加わった場所に起きた骨折を直達骨折(ちょくだつこっせつ)、力が加わった場所から離れた場所に起きた骨折を介達骨折(かいだつこっせつ)といいます。
また外から見て、傷を伴わない骨折を単純骨折または閉鎖骨折といいます。外から見て骨折とわかる傷がついた骨折を複雑骨折、開放骨折といいます。

骨折の原因は?

顎骨骨折はその大部分が外傷性骨折であり、原因は交通事故、けんか、スポーツ、作業事故などによって発生しますが、その内の過半数が交通事故によるものです。交通事故の中では二輪車の運転によるものが目立ちます。年齢的には青壮年、男女別では男性が圧倒的に多く見られます。最近では高齢者の転倒による骨折も増加しつつあります。また子供の場合児童虐待による骨折もあり、注意が必要です。

下顎骨骨折(かがくこつこっせつ)

口腔外科を訪れる顔面の外傷の中で最も多いのが下顎骨骨折です。
基本的に内出血や顔面の腫れ、変形、痛みなどは、どの顔面骨折でも認められます。
この他に特徴的な症状として、下顎骨骨折では噛み合わせの異常・口を開けたり閉じたりするのが困難になります。
下あごには様々な筋肉があり、折れた骨が筋肉に引っ張られることによりさまざまな方向に向かいます。これにより噛み合せがくるってきます。
症状は、必ずしも力が加わった場所だけにでるわけではなく、あごを動かした時の痛み、噛みあわせが合わなくなります。
受傷後すぐに症状に気づかず、数日してから噛み合わせがずれていることで気づくこともあります。
口のなかから直接見えない下顎角部(エラの部分)や顎関節部(耳の前)の骨折が起こっている場合もあります。
またそのような場合は、下顎の変形や歯並びが悪くなることもあります。
診断はまず出血や呼吸の様子を観察したうえで、あごのけがそのものの診察・検査に進みます。
問診・視診・触診で骨折箇所の推定も行います。
X線写真により診断したり、 CT画像によりより正確な診断も行うこともあります。

上顎骨骨折(じょうがくこつこっせつ)

上あごの骨が砕けたり、折れたりするけがが、上顎骨骨折です。多くの場合、顔面の中央部の外傷、転んだり、ケンカ、スポーツ事故、交通事故などで、あごを何かで強く打ちつけたなどのときに発生します。
皮膚や粘膜の損傷、骨折および歯の脱臼、破折などを同時に合併することが多くあります。皮膚や歯の損傷は簡単にわかりますが、骨折は外から見ただけでは判らないことがあります。全身のほかの怪我に気をとられ治療も終わり頃になってから、骨折に気がつくこともあります。口があけにくい、噛み合わせがあわないといった症状がある時は X線写真により診断したり、 CT画像により、より正確な診断も行うこともあります。
上あごの骨だけの骨折だけでなく、上あごの骨に隣接する骨(頬骨、鼻骨、口蓋骨の他、頭蓋底を構成する骨)の併発骨折を引き起こす場合が多くあります。
上顎骨の下半分が骨折したものを Le Fort I 型骨折、 上顎骨が鼻骨を含めて骨折したもの Le Fort II 型骨折と呼びます。また顔面の中央部が頬骨をも含めて頭蓋骨と離れてしまう骨折を Le Fort III 型骨折と呼びます。また、上顎骨が真ん中で骨折したものは矢状骨折といいます。しかし実際には骨折の型はまちまちで、左右が別々に骨折していることが多く複雑化しています。
症状では口があけにくい、噛み合わせがあわない。 Le Fort II,III 型では、頭蓋底骨折を伴うために髄液漏もあります。鼻の変形や鼻閉感などの症状もみられます。眼窩周囲の骨折では、眼球の変異や陥凹などの眼症状が発生します。
いずれの場合も手術による整復、噛み合わせの回復をはかります。

治療法

ほとんどの顔面骨骨折で緊急手術は必要ではなく、 1週間から10日以内に手術を行えば問題はありません。折れた場所によって治療の方法は違います。
急性で重度のものでは呼吸障害や出血による生命の確保がまず第一と考えられます。
その後、あごや顔面の機能障害や傷を最小限に抑えるよう、できるだけ早い時期に根本的な整復固定手術を行います。
怪我の状態が小さければ噛み合わせの確保(上下のあごを縛り合わせる顎間固定)が基本です。最近では正確に骨をつなぎ合わせ、できるだけ早く正常の生活にもどれるような治療法がとられるようになりました。
下顎骨骨折では骨折の部位に応じて口の中や顎の下、耳の前などを切って開き、正しい咬み合わせが得られるように骨折した骨を戻した後、プレート固定や歯にワイヤーやゴムなどをかけて上顎と下顎を固定する方法を行います。

関連疾患

  • 頬骨骨折
  • 頬骨弓骨折