理事長挨拶
この度、公益社団法人日本口腔外科学会の理事長を拝命いたしました福岡歯科大学の池邉哲郎でございます。これまで常任理事として、鄭元理事長、桐田前理事長に直接お仕えし、両先生のお仕事とご苦労に接し、多くのことを学ばせていただきました。また、古郷元理事長にも多くのご助言をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。その中で痛感いたしましたのは、先人が苦労しながら培ってきました伝統の重さ(1933年創立)であります。その重みを引き継ぐことは身にあまる名誉ですが、その名に恥じぬよう全力で努めて参ります。
さて、日本口腔外科学会には、桐田前理事長が掲げられた様々な課題があります。それは、1)学術大会のさらなる充実、withコロナ時代の学術大会のあり方の再検討、2)各国口腔外科学会、IAOMS、AsianAOMSとの国際連携強化、3)次世代若手口腔外科医の育成、4)他学会との連携強化、5)社会への発信と啓蒙、6)新専門医制度への適切な対応と国民の皆様に信頼していただける専門医のさらなる育成と輩出、7)本学会公式英文機関誌J Oral Maxillofac Surg Med Pathol (JOMSMP)のIFの取得、8)女性口腔外科医の更なる活躍の場と環境作り、の8項目です。当然これらの課題を継承し、改善・解決していかなければなりません。上記2)の課題には、国際口腔顎顔面外科専門医(FIBCSOMS)を増やし、シングルライセンスの口腔外科医の地位を守ることも含まれるでしょう。私は加えて、9)歯学部での口腔外科教育、10)地域口腔外科医の連携強化も考えていきたいと思っています。9)は3)と連動しています。10)には地域と都会との間の口腔外科医療格差も含まれるかもしれません。
また、我々は、公益社団法人として、学術・科学の振興を通じて不特定かつ多数の者の利益を増進する事業を行わなければなりません。世界ではコロナ以上の様々な困難が発生しています。恐らくこれから楽な時代は来ないでしょう。そんな時に指針となるのは学会の定款に掲げられた本学会の目的を見つめ直すことでしょう。定款の第4条にはこうあります。
「この法人は、口腔外科学に関する研究の進展と知識の普及を図り、もって我が国における学術の発展に寄与するとともに国民の健康増進に資することを目的とする。」
つまり、(1)口腔外科学という学問を発展させることと、(2)それを国民の健康増進に役立てること、の2点です。我々の先輩方が実行されてきたこの2つのシンプルですが深い目的を継続・継承していけばよいのだと思います。問題は、この2つの目的に対する障害物をいかに排除もしくは未然に防ぐことかと思われます。そのためにも桐田前理事長の掲げられた課題に真摯に向かっていこうと考えています。